東雲研修センター ニュースレター No.55
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今、老朽化マンションの建て替えが進まない問題が全国で見られます。令和3年末時点での全国の築40年を超える分譲マンションの戸数は116万戸でしたが、今後右肩上がりで増え続け、令和23年には425万戸まで増えると予想されています。
老朽化したマンションは、設備の不具合が発生したり安全面で良いとは言えませんし、住む人が居なくなりゴーストタウン化すれば治安面でも悪影響があります。老朽化したマンションの「建て替え」や「大規模改修」を進め、再生をはかることは重要です。しかし、マンションの区分所有者の集会への出席率は築年数が上がるほどに悪くなるだけでなく、持ち主が分からなくなる「区分所有者不明問題」があり、なかなか再生が進まないのが現実です。そこで、政府は建て替える決議の要件を緩和する区分所有法の改正を、令和6年の通常国会に提出する方針です。区分所有法が改正された場合、現在とはどのような点が変わって建て替え等の議論がスムーズに進むようになるのか、是非押さえておいて頂きたいです。

という訳で、今回は区分所有法の改正素案についてご紹介したいと思います。

橋本総業株式会社
東雲研修センター事務局


INDEX
【1】研修情報‥‥東雲研修センター 定期研修情報
【2】エコ次郎先生とエコ娘のなるほど講座‥‥【老朽化マンション建て替えに関する区分所有法の改正素案】
【3】区分所有法の改正素案
【4】編集後記‥‥エコ次郎の小ネタ横町
 
【1】東雲研修センター 定期研修情報
◎東雲研修センターは感染予防対策徹底中!!
東雲での研修は、実習を伴うことから濃厚接触の可能性があります。
感染防止には万全の体制で臨んでおります。詳しくはHPをご覧下さい。

東雲研修センターの定期研修は、直接のお客様だけでなく、メーカー様や関係団体、橋本総業(株)と多少でも関係のある方々でしたらどなたでも受講できます。
現在東雲研修センターで募集している研修のご案内です。特徴は、座学だけでなく研修によって現調、試運転、設置、組立などの実習が含まれていて、ホームページから申し込みが出来ます。是非ご検討下さい。



【現在受講生募集中の研修一覧 (2024年3月まで) 】
1月11日(木)エアコン施工研修10:00~17:0012,000円10名
1月16日(火)システムバス現調研修10:00~15:006,000円15名
1月23日(火)ガス給湯器・ハイブリッド給湯器現調研修10:00~15:006,000円15名
2月6日(火)キッチン現調・施工研修10:00~16:006,000円15名
2月22日(木)便器・WL設置研修10:00~15:0010,000円15名
3月22日(金)パッケージエアコン施工研修10:00~17:0015,000円6名
3月28日(木)エアコン施工研修10:00~17:0012,000円10名

* 今年度より一部の受講料を部材価格の影響から改定させていただきます。ご了承願います。

お申し込みは こちらから

◎東雲で開講の研修は昼食をご用意しています。
◎受講料は税込です


【2】エコ次郎先生とエコ娘のなるほど講座
本日のお題 【マンション建て替えに関する区分所有法の改正素案】
エコ娘 エコ次郎先生、こんにちは!早速なんですけど、今日も気になっている事があるので教えて下さい!
私の住む町の駅前に古いマンションがあるんですね。非常階段が錆びていて超危ないし、外壁も脆くなってて少しだけど崩れているところもあって。だから汚くて暗い感じだし、誰も住んでいない部屋も結構あって、窓が真っ暗だからちょっと怖いなーって思う事もあるんです。でもその目と鼻の先のマンションの方が築浅なのに今まさに大規模修繕中で、建物全体が黒いネットで覆われて結構経つんですよ。何でそんなに古くないのに手を入れるマンションと、古くてガタが来ているのに修繕も建て替えもしないマンションがあるんですか?メンテナンスしないなら、一層のこと新しいマンションに建て替えちゃった方が住む人も絶対に増えるし、活気が戻って絶対に良いと思うんですけど!
エコ次郎 エコ娘くんは昨今の老朽化マンションの問題にまで無意識のうちに関心を寄せていて、本当に素晴らしいですね。このコーナーを始めた頃とはまるで別人で、正直こんなに社会の問題に興味を持って頂けるとは思っていませんでした。本当に嬉しいです。
さて、ご質問にあったマンションの老朽化ですが、先ずマンションとは1つずつの部屋を個人が所有している集合体事なんですね。いわゆる集合住宅というもので、不動産用語では分所有建物と言います。ちなみにそれぞれの部屋(各住戸)は区分建物と言います。
戸建でしたら所有者は自分たちファミリーだけなので、建て替えも修繕も改築も全て自分たちの意思で決められますが、分所有建物は何をするにも区分建物の所有者(区分所有者全員で決めなければなりません。
エコ娘 あ、そうか。私、今の今まで勘違いしてました。
マンションって部屋の持ち主が修繕積立金を払っているけど、管理はどっかの管理会社がしていて、ある程度の修繕が必要になったら管理会社が勝手に修繕するって決めて、集めていた修繕積立金で上手くやりくりしてくれるものなんだとばかり思っていました。けど、管理会社はあくまでも日頃の管理が担当で、色々と決める権利は持ち主にあって、ちゃんと持ち主全員で話し合って決めないといけないんですね。でも話し合っても意見ってなかなかはまとまらなそう。例えばですけど、「古いから建て替えよう」ってなったとして、反対の人が居たらどうなるんですか?まさか全員賛成じゃないと可決されないなんて事はないですよねぇ
エコ次郎 はい、もちろん全員賛成ではないのですが、現行の『区分所有法ですと区分所有者の5分の4の賛成が得られないと建て替えは出来ません。
エコ娘 5分の4!? それって結構ハードルが高くないですか?
エコ次郎 そうなんです。しかも、5分の4とは話し合いに参加した人の中での5分の4ではなく、あくまでも““区分所有者の5分の4””なので、話し合いに参加しない人や、そもそも持ち主が不明という区分所有者不明」でも分母に含まれてしまうんです。築年数が上がるほど話し合いへの参加率が下がる傾向にある上に、欠席者や不明者は反対票にカウントされてしまうので、下手をすると参加者全員が賛成をしても5分の4に達しなくて可決できない、なんて言う事も起きかねません。
エコ娘 えーっ!そしたら最悪な話し、倒壊するまでそのまんま!?
エコ次郎 現状ではそうなってしまいますね。でも、全国で老朽化マンションの建て替えが進まない事、その理由が問題になっていて、喫緊の課題なのです。
そこで政府は『区分所有建物の再生の円滑化を図る方策』として、建て替え決議の多数決要件の緩和を検討しています。具体的には、「客観的事由」が認められる場合は、建替え決議に係る多数決割合を引き下げられる(多数決割合を区分所有者及び議決権の各4分の3以上とする)というものです。
「客観的事由」とは、地震や火災などに対する安全性が建築基準法を満たしていない配管設備の損傷や腐食その他の劣化が著しく政省令等によって定める基準を満たしていなく、健康に被害を及ぼす場合高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律を満たしていなく、バリアフリー化が必要と認められた場合です。また、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの対象とすることを前提としています。
エコ娘 なるほど。確かに事故が起きてからじゃ遅いから、そういう緊急性のある場合は4分の3の賛成だと話しがまとまり易そうですね。あと「所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組みの対象」って言うのが結構重要な気がしました。
エコ次郎 良いところに気が付きましたね!私も実はそこが結構影響力が大きいと感じますので、この改正法案が早く可決されることを願っています。
そうそう、少し遡るのですが先程「修繕積立金」というワードが出ましたね。これに関して少し説明をさせて下さい。修繕積立金は区分所有者が毎月払うもので、国土交通省が定める修繕積立金の『標準管理規約』で修繕にしか使えないと決まっているんです。なので、もし建て替えることになった場合は別途区分所有者がお金を出し合って建て替えることになります。
エコ娘 えーっ!修繕積立金って毎月結構な金額を払ってるのに、建て替えには使えないんですか!?っていう事は、マンションの購入金、月々の管理費&修繕積立金、建て替え費用...。マンションに住むのも結構大変なんですね。
一軒家なら建て替えるにしても改築にしても自分の予算と単独の決断で進められるけど、マンションだと金額も自分で決められないし、どんなに反対してもさっきの区分所有者の4分の3で建て替えが決まっちゃえば建て替え費用を払うしかないから、それなりに余裕が無いとマンション住まいはキツイかもしれないですね。
エコ次郎 一軒家にもマンションにもそれぞれにメリット・デメリットがあるので、どちらが自分には合っているのかをしっかり吟味して選ぶと良いですね。
エコ娘 まだまだ先の話しだけど、私も将来しっかり考えよーっと!
あ、そうだ、さっき『区分所有法』って先生仰ってたじゃないですか。その改正が上手くいけば老朽化マンションの建て替えが今よりも円滑に行えるっていう話しですよね。その『区分所有法』って言うのは今回の改正では建て替えに関してだけなんですか?
エコ次郎 いいえ、他にもありますよ。「建て替え」は区分所有建物の再生の円滑化を図る方策』の項目の1つで、「建て替え決議がされた場合の賃借権等の消滅」や「多数決による一棟リノベーション工事」に関しても改正を目指しています。また、“再生”だけではなくて“管理”に関しての区分所有建物の管理の円滑化を図る方策』もまとめています。
次の項目で、区分所有法の『区分所有建物の再生の円滑化を図る方策』と『区分所有建物の管理の円滑化を図る方策』に於いてどの項目をどう改正しようとしているのか、特に押さえておいて欲しい項目をまとめますので、是非お読み頂けたらと思います。
エコ娘 そういうの助かります!よろしくお願いします!

【3】区分所有法の改正素案

区分所有建物の再生の円滑化を図る方策

[1]建て替えを円滑化するための仕組み
○ 建て替え決議の多数決要件の緩和
(現行) 区分所有者の5分の4以上の賛成が必要
(改正) 「客観的事由」が認められる場合は区分所有者の4分の3以上の賛成で良い

○ 建て替え決議がされた場合の賃借権等の消滅
(現行) 建て替え決議がされても専有部分の賃借権等は消滅しない
(改正) 立ち退き請求後6ヶ月以内に賃借人は退去、区分所有者は賃借人に補償金を支払う

[2]区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み
○ 多数決による建物・敷地一括売却や建物の取壊し等
(現行) 全員の同意が必要
(改正) 建て替えと同等の多数決(建て替え要件と同一)

○ 一棟リノベーション工事
(現行) 全員の同意が必要
(改正) 建て替えと同等の多数決(建て替え要件と同一)


区分所有建物の管理の円滑化を図る方策

[1]集会の決議の円滑化
○ 所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み
(現行) 所在等不明区分所有者も決議の母数に含む(反対票にカウント)
(改正) 裁判所の関与の下で、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外できる

○ 出席者の多数決による決議を可能とする仕組み
(現行) 普通決議・特別決議において区分所有者の過半数の賛成が必要
(改正) 普通決議・特別決議において集会出席者の過半数の賛成で良い

[2]区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
○ 所有者不明の専有部分の管理制度
(現行) 所在等不明区分所有者の専有部分は他人が勝手に管理できない
(改正) 裁判所が管理人を選任して管理させる事ができる

○ 管理不全の専有部分・共用部分の管理制度
(現行) 区分所有者の居る専有部分は他人が管理できない
(改正) 裁判所が管理不全専有部分管理人を選任し管理させる事ができる

[3]区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
○ 区分所有者が国外にいる場合における国内管理人の仕組み
(現行) 区分所有者が海外在住で専有部分が例え管理不十分でも他人に管理する権利は無い
(改正) 区分所有者が自ら日本在住の国内管理人を選任し管理を代行して貰う事ができる

[4]共用部分の変更の円滑化
○ 共用部分の変更決議の要件緩和
(現行) 区分所有者の4分の3以上の賛成が必要
(改正案1) 基本は現行の多数決割合のままだが「客観的事由」が認められる場合は出席した区分所有者及びその議決権の各3分の2以上の賛成で良い
(改正案2) 多数決の割合を出席した区分所有者の頭数だけでなく、その議決権についても規約で過半数まで減ずることができる事とす

このように、あらゆる観点から区分建物・区分所有建物の管理を円滑に行えるように改正案が練られ、そして増え続ける老朽化マンションが管理不全に陥らず、大規模修繕や建て替えに区分所有者の多数決で速やかに対応できるように区分所有法が改正されようとしています。

詳しくは、法制審議会区分所有法制部会第16回会議(令和5年12月21日開催)の区分所有法制の改正に関する要綱案のたたき台をご覧下さい。

https://www.moj.go.jp/content/001408795.pdf



【4】編集後記 ~エコ次郎の小ネタ横町~

皆さま、こんにちは。エコ次郎でございます。すっかり冬になってしまい、先週は日本海側でかなりの降雪がありました。12月なのに夏日を記録した地域があったと思えば、今度は異例の降雪。日本の冬も、随分と付き合い方の難しい季節へと様変わりしてしまいましたね。

さて、今日はつい先日TVでたまたま知った竹製の自転車のお話しです。自転車と言えばアルミやカーボンが一般的ですが、ブラジル出身の日系3世のハラ・ジェルソン・アイザワさんは、「真竹」という種類の竹で自転車のフレームを作っているそうです。私は、昭和の青竹踏み愛用者。竹が硬いのは実体験で知っています。けれど、天然素材だからさすがに温度や湿気に弱くて歪みが出るのでは?と思ったのですが、その心配は不要なようです。むしろ、竹は軽くて強くてしなやかなで、振動を吸収するので乗り心地が抜群なのだそうです。更に、ジェルソンさんの作るフレームは世界基準の強度試験をクリアしていて、品質もお墨付き。見た目で個性も発揮できますし、天然素材なので世界に1つしかない特別感もあるので、きっとサイクリングが格別の味わいになるのでしょうね。

この感覚、5月にご紹介した大規模木造建築に似ているなとふと思いました。強度的にどうなんだろう?と思っていた木でも超高層マンションが建てられるのと同じで、竹にも無限の可能性が秘められているんだろうと思います。竹は繁殖力が強いので、適切に管理をしないと増殖し、他の樹木や植物の光合成を妨げ、生態系を壊す要因となってしまうのだそうです。また、竹の過密化が進んだ竹林では、枯死した竹 =「立ち枯れの竹」が倒伏し、中に入ることができないほど荒廃しているのが現状で、その状態を“竹害”と言って社会問題にもなっているそうです。恐らく自転車のフレームとして加工するのは、技術も時間も掛かって量産は難しいのだと思いますが、どんどん再生して来る植物ですので豊富に手に入りますし、硬くて強度もあるので、意外と竹の応用方法は幅広いかもしれないですね。またアッと驚く姿で竹を見られたら嬉しいです。

最後になりましたが、今年もご愛読下さいましてありがとうございました。 皆さま、どうぞ良いお年をお迎え下さい。



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