本日のお題 【木造建築の大規模化と国産材の活用】 |
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エコ次郎先生、こんにちは!もう梅雨の季節ですね。この前GWがあって「やっと羽を伸ばせる~!」って思ったばっかりなのに、月日が過ぎるのがホントに早過ぎます!
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エコ娘くん、こんにちは。私も同じようなことを考えていました。楽しい時はあっと言う間ですね。私は今年のGWは遠出したりはせずにゆっくり過ごしましたが、エコ娘くんはお出かけされたんですか?
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はい、今年は家族で京都に行って来ました。お姉ちゃんが京都好きで今回は東寺に行ったんですけど、特別展を開催中で五重の塔に入れたんです!今の五重の塔って4代目らしいんですけど、380年も前にあんなに高くて立派な木造の建物が作られたなんて、今みたいにクレーンでウィーンって持ち上げることも出来なかったのに、本当に不思議でした。木造ってやっぱり重厚感もあるし、ぬくもりも感じられて良いですよね。
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お若いエコ娘くんにも木造の良さがお分かり頂けているとは、大変嬉しいです。
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特に理由がある訳ではないんですけど、何か木って良くないですか?友達の家に遊びに行くと結構RC造とかいうのも多くて、丈夫そうで良いなぁとも思うんですけど、何だろう?落ち着かないんです。大きな商業施設に行ってもそうで、お買い物をしている時はそうでも無いんですけど、帰りに別棟の木造のカフェに寄るとすごくホッとするんです。だからもっと商業施設にも木造が増えたらいいなーって思っているんですけど、強度の問題とかでなかなか大きな建物を木造って難しいんでしょうね。
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そうですね、と言ってしまいそうなところですが、実は今、大型木造建築が熱いんですよ!木造は小型建築や住宅向けで、耐久性・耐震性の低さや、火に弱い、シロアリ等の害虫に弱い、繊維方向による強度の差、収縮・反り・割れによる変形、品質のばらつき、と言ったデメリットが一般的に認識されていて、大型建築物と言えばRC造や鉄骨造が現代建築物の主役になっています。で・す・が、この大型建築物市場に「木造」が主役の座を狙って成長しつつあるのです。
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え、そうなんですか!? 大型建築物ってどれくらいのもので!?
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エコ娘くん、もうお忘れですか?数年前に日本でとても話題になった、とても大きな建築物があったんですよ。世界的な大きなイベントの為に建て替えられたシンボル的存在です。
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世界的・・・・!あぁ!あぁぁ~っ!!国立競技場だぁ!!知ってます!隈研吾さんの設計で、たくさん木が使われているんですよね、思い出しました!
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あの競技場が出来た時は、さすが木造建築の巨匠だ!と私も興奮した事を覚えています。もちろんあれだけの規模になりますと構造は鉄骨造ですが、屋根鉄骨は鉄骨と木材を組み合わせたハイブリット構造を採用しています。ハイブリット構造とは、十分な強度のある鉄骨を主体としつつ、地震や強風による変形を抑えるため木材を組み合わせたものですが、屋根を見上げるとふんだんに使われた木が一面に広がっていて圧巻です。本当に木の放つ安らぎと言いますか、優しい雰囲気は格別ですね。
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私はまだ生で見たことは無いけど、初めてテレビで見た時はあの雰囲気にホッとしたし、嬉しかったです。最初は別の近未来的なデザインが選ばれていたじゃないですか。あれはあれで凄いなと思ったけど、やっぱり自然と調和するデザインの方が街中にあっても違和感が無くて私は好きだな♪
先生、国立競技場に使った木材って全部でどれくらいの量なんですか?あんなにたくさんの木材を一体どこから集めて来たんだろう?色々知りたいです!
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国立競技場は屋根だけでなく軒庇にも木が使用されていて、全体で約2,000m3もの量なんですよ。と言われても分からないですよね。1Lの牛乳パックに例えると200万本分です。
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牛乳パックで言われても全然分かりません!笑 とにかくすごい量なんですね!
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そう言うことです(笑)
木材の産地ですが、軒庇に使用したものは実は純国産で、47都道府県から森林認証を取得した木材を調達しまして、スタジアムの方位に合わせて配置しています。木材は主にスギで、沖縄県のみリュウキュウマツを使用しています。
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方位で都道府県順に並んでいるっていうこと?全国の木材を混ぜて使っちゃえば楽なのに、わざわざ都道府県毎にまとめて使ったなんて芸が細かいと言うか、木への敬意を感じるな~。大切に扱ってくれたんだなって思えて嬉しいですね!
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そうですね、私もそう感じます。 オリパラ関連で建設された施設に、実は国立競技場よりも多くの木を使った「有明体操競技場」があるんですよ。こちらは牛乳パック260万本分でして、鉄骨造一部木造地上3階建てで構造にも木が使われています。そして鉄骨などを用いない木構造梁が採用された屋根には、世界最大級となる全長約90メートルの木造のアーチが屋根を支える構造になっていまして、日本の技術の高さを肌で感じることが出来るんです。ちなみに大梁には北海道と長野県産のカラマツ集成材が採用されています。
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あの屋根って全部木だったんだ!!えー、信じられない...。
思いっきり今更なんですけど、何で急に日本は木材を使って大型建築物を造る事にしたんですか?やっぱり何か転換点があったから今「大型木造建築が熱い!」ってなっている訳ですよね?
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やはりエコ娘くんなら必ずその質問をして来ると思っていました。
まず一つは、平成22年に公布・施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の影響があります。戦後に植林された木が今伐採期を迎えているので、効率的な消費を促す目的ですね。それが進むと林業も盛んになるので安定的な雇用が生まれますし、新たに木が植えられれば、近年頻発している山崩れや地すべりなどの自然災害の防止にも役立ちます。そして、木は二酸化炭素を吸ってくれますので、環境保護問題にも一役買ってくれるという訳です。
2つ目は、輸入木材の価格高騰です。2021年に「ウッドショック」と呼ばれる世界的な材木価格の高騰が発生し、同年9月には木材・木製品・林産物全体の輸入価格が前年末比で69%も上昇してしまいました。更に円安も相まってさらなる価格高騰が見込まれる為に、国産木材が注目を集めているのです。
3つ目は集成材の技術レベルの向上です。集成材とは厚板を繊維方向に平行に重ねて特殊な接着剤で貼り合わせた木材を指すのですが、一般的な無垢材と呼ばれる天然木材に比べると約1.2~1.4倍の強度があると言われて、ばらつきのない均一的な強度と品質を備えているのが最大の長所です。現在の大規模木造建築において、接合部に専用金物、構造部材に集成材を用いた「集成材構法」が大注目浴びているのですが、構造用集成材を用いた構法なら大スパン・大空間が可能ですし、建築の構造の安全性を計る構造計算を行う事によって設計の自由度と構造強度を両立できるなど、大規模木造建築にふさわしいメリットを多く持ち合わせているのです。
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色々難しくて全部は理解出来ていないんですけど、輸入木材の価格高騰とか色々あるけど、やっぱり国産木材の品質の良さ故に集成材も高品質で、みんなに注目されてるんだと思うな!
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そうですね。私もそう思っています(^_^)
最後に、集成材の上を行く「CLT(Cross Laminated Timber)」と言う建築材料についても少々。集成材が繊維方向に平行に重ねているのに対して、CLTは厚板を繊維方向に直交に重ねて接合しています。木材が原料なので断熱性がコンクリートに比べると10倍、鉄に比べると実に400倍以上!工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入するプレファブ化の実現によって、大判パネルを利用すれば材料の数を減らすことが出来ますし、主に杉や檜と言った軽量の木材を主原料にしている為に扱いが楽なので、施工の工期短縮も期待出来ます。
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固定概念を崩される感じで、未だに木造で大型建築物って何か信じられないけど、きっとこれからすごい成長して行くんだなって感じました。
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もう既に1年ほど前に最高高さ約44.1m、11階建ての「純木造高層ビル」が横浜市に完成していますし、2021年には銀座に12階建高層木造商業施設が建ちましたし、千葉県鎌ケ谷市で建設中のマンションは2階から15階がすべて木造です。「大型木造建築が熱い!」はこれからどんどん広がりを見せて行くこと間違いなしです!
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すごーい!何だかすごくこれからの木造建築が楽しみです!先生、せっかくなので既存のおすすめ大型木造建築物も教えて下さい♪
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もちろんです。お任せ下さい!
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