本日のお題 【日本の食料自給率の実態】 |
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エコ次郎先生、最近食料品の値段が上がっていて、ママが「エンゲル係数が右肩上がりで困る~!!」ってヒーヒー言ってるんですけど、そんなに値上がりしているんですか?
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はい、その通りです。家計をやりくりする立場の方は相当頭を抱えていると思われます。日本は食料自給率が高くはない為に輸入食品が値上がりするとモロに食卓に影響が出ますので、岸田政権は食料自給率を上げる施策を打ち出していますね。
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先生、その『食料自給率』って言うのは、自国でどれだけ食料が賄えているか?を数値で表したものっていうことですか?
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さすがエコ娘くん、何でもご存知ですね!おっしゃる通りで、もう少し分かりやすく言うと“我が国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標”でして、食料自給率には単純に重量で計算することができる『品目別自給率』と、食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算する『総合食料自給率』の2種類があります。更に総合食料自給率には、熱量で換算する『カロリーベース』と、金額で換算する『生産額ベース』があります。一般的に食料自給率や自給率と言うと『総合食料自給率』を指していて、『カロリーベース』と『生産額ベース』で比較されますが、『カロリーベース』は日本や韓国・台湾などのごく一部でしか採用されていない指標ですので、国際標準は『生産額ベース』だと言うことも覚えておいて下さいね。
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へーぇ、知らないことだらけだ!
先生、では生産額ベースでお聞きしますが、日本の食料自給率ってどれくらいなんですか?
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まず、令和3年度は前年度より4ポイント低い63%でした。昭和40年代前半は85%~91%と高い水準でしたが、それ以降緩やかな右肩下がりで、昨年の63%は過去最低を記録しています。とは言うものの、諸外国と比べても低い水準ではありますが、桁外れに低いと言う訳ではありません。例えばドイツは62%・イギリスも64%と日本とほぼ同水準ですし、スイスに至っては50%と日本を下回っています。(*諸外国のデータは令和元年)
ちなみにカロリーベースで比較すると日本は38%まで落ち込み、諸外国の中でも極めて低水準に陥ってしまっています。
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そうなんだぁ。『生産額ベース』と『カロリーベース』だと随分結果に乖離があるんですね。でも、そんなに違いがあったらどっちの数字を気にすれば良いのか分からなくなると思うんですけど、どっちかじゃダメなんですか?
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そう思いますよね。実際にカロリーベースを採用している国は少ないので絶対ではないですが、カロリーベースは食料安全保障の観点から、生産額ベースは経済活動を評価する観点から計算されたもので、どちらにも知っておくべき情報は詰まっています。
例えばカロリーベースですと、単位重量当たりのカロリーが高い米・小麦や油脂類の影響が大きく、生産額ベースでは単価の高い畜産物や野菜・魚介類の影響が大きくなります。つまり、小麦や大豆と言った穀物類や、カロリーが高い油脂類や畜産物を輸入することで食料(カロリー)の62%を賄っていて、総じて輸入品より国産品の方が付加価値が高く、高品質な農産物を生み出している為に生産額ベースでは63%を記録している、という事が読み取れます。
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なるほど。どんな結果にも必ず重要な情報が隠れているんですね。
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そういう事になりますね。ではそれらを踏まえて、次に『品目別自給率(重量ベース)』を見てみましょう。
先ずは米、野菜、魚介類。古くから日本の主食である米は97%、野菜79%、魚介類52%と高くなっています。これは生産基盤や生産技術が代々受け継がれていることや、生鮮野菜は長期保存ができず輸入が難しいこと、魚介類は国内で新鮮なまま流通できるといった理由が考えられます。
続いて牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品などの畜産品の自給率です。牛肉35%(9%)、豚肉49%(6%)、鶏肉64%(8%)、鶏卵96%(12%)、牛乳・乳製品59%(25%)となっていて一見そこまでは低くはないように見受けられますが、注意したいのがカッコの中の数字です。家畜が毎日食べている飼料に目を向けてみましょう。飼料自給率も発表されていて、令和元年で25%でした。草などの粗飼料は自給率が77%なのですが、飼料向けの穀類は国内で生産が困難なため、トウモロコシなどの濃厚飼料は自給率が12%しかありません。結果として粗飼料と濃厚飼料を合わせた飼料自給率は25%で、この飼料の自給率を考慮して、純粋に国産飼料のみで育った家畜がカッコ内のパーセンテージなのです。食肉類はすべて1桁とは、かなり低い水準で驚きますよね。
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うわ~、家畜の餌は盲点だったなー!食肉類の自給率が1桁って、さすがに心配になります。これからもずっとお肉食べて行かれるかな...。
先生、私はパンとか焼き菓子とかの小麦粉を使ったものも大好きだし、きな粉とか煮豆とか納豆とかの大豆製品も良く食べるんですけど、人間用の穀物も国産だけじゃ全然足りないんですか?
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そうですね。小麦や大豆、飼料用の穀物は、日本の限られた農地では大量に生産するのが難しいのです。その為、広大な農地を有し、気候が生産に適したアメリカ、オーストラリア、カナダ、中国などで大規模に生産されたものの輸入に頼っているのです。小麦は自給率16%、大豆は6%ととても低いです。ウクライナは小麦の輸出量が世界第5位、ロシアは世界第1位。日本の小麦の輸入先はアメリカ(49.8%)、カナダ(33.4%)、オーストラリア(16.8%)なので、ウクライナ産の小麦が出荷されなくても、ロシアが経済制裁で小麦の貿易を禁止されようが影響は無いように思いますが、実はそうではないのです。これまでこの2カ国から小麦を輸入していた北アフリカや南アジアの国々は他の小麦の生産国に頼らざるを得なくなるので、小麦の争奪戦となって値が上がり、日本でも値上がりは避けられません。
このような事が他の食料でも起こっている為、エコ娘くんのお母様がおっしゃる「エンゲル係数が右肩上がりで困る~!!」に繋がるのです。
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なーーるほど!やっと理解ができました!そう繋がる訳か、う~ん納得です。
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「食料を自給できない人たちは奴隷である」「食うものだけは自給したい。個人でも、国家でも、これなくして真の独立はない」と言った著名人も居るほど、食料自給率が低いことは国の深刻な問題なのです。日本はこれ以上食料自給率を下げない為に対策をとる事が急務で、現在はまだ僅かではありますが少しずつ動き出している施策もありますので、次の項目ではそれについてご紹介したいと思います。
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もう動き出してるんだ!それは是非知りたいです。先生、今回も分かりやすく説明お願いします♪
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はい、お任せ下さい!
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